最近正式にスタートしたOurmedia.orgは個人の作成したビデオ,オーディオ,写真,テキストなどの草の根コンテンツを無償で蓄積するサービスだ。誰でも蓄積されたコンテンツを利用することができる。自分のポッドキャスティングに使える音楽などのコンテンツを探している人には朗報かも知れない。ここで使用が推奨されている著作権ライセンス方法がクリエイティブ・コモンズだ。この機会にこのネット上の著作権ライセンスの使い方についてまとめておこう。
現代ではビデオやオーディオに限らず著作物をコピーしたり、改変したりする権利はすべて自動的に著作者が持つことになっている。いわゆる"All Rights Reserved"というやつだ。しかし、自分の作品の著作権を主張するより、広く使って欲しいと思う人もいるだろう。そうは言っても、まったくのパブリックドメインになってしまって勝手に変えられるのはいやだとか、まあ、非営利目的ならいいかもとか、人によって要求条件はさまざまだろう。でも、ほとんどの人は法律の専門家じゃないから自分にあったライセンス契約書をきちんと作るなんていうことはできない。それにそもそもそんな時間的余裕もないだろう。そんなときに利用できるのがクリエイティブ・コモンズによる著作権のライセンスだ。
クリエイティブ・コモンズ(CCL)は、言ってみれば、そういう著作権ライセンス条件の規格化、標準化だ。あまり細かいライセンス条件にこだわらないならメニューに従って、
1)営利目的利用を許す/許さない
2)作品の翻案・改変を許す/許さない
3)その場合、他の人々が同じ条件で共有する場合のみ許す/許さない
の3つの条件についてだけ自分でYes、Noを決めさえすれば、それに応じたライセンスを作ってくれる。いずれの場合も、原著作者の表示を入れることが条件だ。3)の同一条件ライセンスは2)の改変を認めた場合だけの条件なので、3つの項目で実質的に6種類のライセンス条件が存在することになる。
(厳密には、この6種類の標準ライセンスの他に、パブリックドメイン、発展途上国だけに許可するDeveloping Nations、全コピーを禁止しサンプリングだけを許可するSampling、米国建国時代の著作権に則り14年間限定の著作権を宣言する米国建国時代の著作権、GNU GPL/LGPLに則ったCC-GNU GPL/LGPL、音楽ファイルの共有のためのコピーやWebcastなどだけを許可するShare Musicが用意されている。2005/4現在)
例えば、原著作者の表示を入れれば、非営利目的だけに利用してもよいけれど、改変は認めないという場合こういうライセンスを生成してくれる。それとともにCCLのアイコンも生成してくれるので、これを自分の著作物の著作権表示として貼り付けておくことができる。アイコンをクリックするとライセンス条件が表示される。
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
CCLは著作物を利用する側にも大きなメリットがある。CCL表示された著作物は上にあげた6つのライセンス条件に規格化されているから、ライセンスの条件は詳しく読まなくてもクリアだ。また、条件を見なくてもCCLであるかぎり非営利目的で改変しないなら原著作者表示することで利用可能だということにもなる。
CCLのさらにすごいところはネット上のコンテンツへの適用が想定されているので、実は3つの条件がどうであるのかが画面には表示されないけれどCCLのアイコンの裏にXML(RDF)によるメタ情報としてちゃんと表記されている点だ。XMLなのでシステムがこれを認識することができる。だからOurmediaのようなサービスに登録されたコンテンツでCCL表示されているものは、コンテンツの表示と同時にどの条件でライセンスされているかも表示されるようになっている。
CCLのメタ情報は検索サービスで威力を発揮する。Creative CommonsのFindサービスや、先週βリリースされたYahoo!検索の「クリエイティブ・コモンズ・サーチ」はCCLコンテンツを対象にした検索サービスだ。キーワードにmp3とかphotoとか指定できるとともに、ライセンス条件のXML表示のおかげで、「改変を認めるものだけ検索する」とか、「営利目的で利用できるものだけ検索する」とか言ったことが可能になっている。
参考リンク:
Creative Commons
クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
書籍:
クリエイティブ・コモンズ、デジタル時代の知的財産権、NTT出版
コモンズ、ネット上の所有権強化は技術革新を殺す、ローレンス・レッシグ著、翔泳社
ブログ・ニュース:
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Kj
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