ラジオNikkeiのWebマスターによるポッドキャスティング試験番組はなかなか好評のようだ。4月からは本格的な番組の配信が始まるとのこと。日本の商業ポッドキャスティングの第一歩が見えてきた。米国では一歩先ラジオ番組のポッドキャスティング配信が広がり始めている。日本の他のラジオ局もこうした動きに追従していくことになるのだろうか?
一見似たような道を歩み始めているように見えるポッドキャスティング。どちらの国でもラジオが他のメディアに圧倒されて背水の陣である点は共通しているけれど、ラジオを取り巻く事情はそれぞれに若干違うように思う。
米国では通勤時間を中心とした車による移動時のサラリーマンがラジオのコア・リスナーだ。車の運転中だから、安全上テレビや新聞がこの場面に入り込む余地はほとんどない。最近は衛星ラジオがここに良質の番組を投入することで既に500万人以上のリスナーを確保し、さらにリスナー層を広げつつある。ポッドキャスティングもiPodのカーオーディオとの連携が普及すれば、聞きたいときに聞きたいものが聞ける録音型コンテンツとしてこの領域に普及していきそうだ。
日本でも通勤時間、移動時間はラジオの潜在市場であることにかわりは無い。しかし、従来のラジオはこの潜在市場にほとんど入り込めていない。日本の大都市の大多数のサラリーマンは電車通勤だ。車内では新聞を読むことも本を読むこともできる。ウォークマン以降は各種ポータブル・レコーダによる音楽リスニングという楽しみ方も大いに発展している。最近は携帯でメールやゲームを楽しむという手もある。中吊り広告だって結構面白いし、運よく座席に座れた人には居眠りをする自由もある。いきおい、ラジオは厳しい競争にさらされる。そもそも電波というメディアは電車という鉄の箱は苦手だ。受信状況はいまひとつ良くない。その上、通勤に持ち歩くラジオにはカーラジオよりずっと厳しいコンパクトさが求められるから、最新鋭の衛星ラジオも大きなハンディーを背負うことになる。
一方、番組コンテンツはどうか。米国でこのコア・リスナー層に一番たくさん質の高い番組を提供してきたのはNPR(公共放送ネット)のメンバー各局だろう。Kjもささやかながら米国に住んだ経験がある。通勤時間にはBBCとの提携のWorld News、ニュース解説のAll Things Considered、土曜日の買い物の時間帯には車何でも相談のCar Talk等など地元のキー局WBURから流れる番組をよく聞いた。NPRは先陣を切ってポッドキャスティングの配信を始めているけれど、同ネットの持っているコンテンツの豊富さから言えばまだまだ配信対象はごく一部のように見える。ポッドキャスティングの有効性が確かめられ本格的な配信が始まれば、音楽番組を中心とする衛星ラジオとはまた違ったリスナー層をつかんでいくことができるような気がする。
さて、日本のラジオ番組コンテンツのほうだ。残念ながらKjは日本では典型的なラジオ離れ組の一人なのであまり確たることは言えないが、上に書いたような通勤途上向けの市場に入り込めなかった日本のラジオ放送は家庭の主婦や仕事で車を運転する人たち向けの番組に活路を見つけたようだ。残念ながらこの種の番組コンテンツはそのままでは仮にポッドキャスティングで配信しても通勤途上のサラリーマンの心をとらえることはできないように思う。
そういう中でラジオNikkeiがポッドキャスティングに名乗りを上げた。このニッチなラジオ局がネットラジオを中心にこれまで育ててきた番組コンテンツはポッドキャスティングで通勤途上に聞くのにもうってつけのものがたくさんあるように思う。ニッチのリスナー層を育ててきただけあって、力強いファンも多いようだ。現状では明らかにmp3プレイヤーの購買層とは異なるけれど、いまどきの中高年は結構お小遣いの多い人も多い(らしい)。ラジオNikkeiがポッドキャストするならiPod買っちゃおう、なんていう人もかなりいるに違いない。もちろん、これまでmp3プレイヤーで音楽を聴いていたもう少し若い層にリスナー層が広がっていくことも期待できる。このラジオ局の番組のポッドキャスティングならば、Webマスターも書いているように「”ラジオ復権”の大きなきっかけになる」かもしれない。
ネットとメディアの連携に果敢に取り組む姿勢に声援。
参照リンク:
1)Business Week:The New Radio Revolution(3/3/2005)
2)Manolinのブログ:「新しい」ラジオ。米国の衛星ラジオ事情のやさしい解説
3)ラジオNikkeiの試験配信
4)ラジオNikkei
Kj
最近のコメント