現在のiTunesはpodcastingを取り込み、音楽のみならず音声コンテンツの一大集積所のようなものになってしまった。後は楽曲も、ポッドキャストも、蓄積されていくのみ。そして私は膨大なリストの中をうろうろする(iTunesはそういうことを前提として作られたのかわからないけれど、うろうろ出来る作りになっている)。私のインターネットは、iTunesの中をうろうろするだけで完結してしまいそうだ。
なるほど。リスナーの立場からのうまい説明だな、と感心して参照させていただいた。
ユーザがその中をうろうろするだけでやりたいことが完結してしまうようなソフトウェアのことを技術屋はOSとかプラットフォームとか呼ぶ。要するにWindowsやLinuxだ。
で、例によってその後は著者の意図とは関係なく論旨を展開してみた。
ちょうどパソコン・ユーザのやりたいことがIntelプロセッサの上で動くWindowsの上で完結してしまうように、ユーザがオーディオ・コンテンツに関してやりたいことはWindowsやMac OSの上で動くiTunesの上でほとんど完結してしまうようになるかも知れない。そのとき、iTunesは、パソコンにおけるWindowsのように、デファクトのオーディオ・コンテンツOSとしての地位を確保できるだかろうか?
そのためにはもちろんアプリケーションが必要だ。WindowsにはIEやOutlook、Wordのようなアプリケーション・ソフトがあって初めてユーザがやりたいと思う一定範囲のことができるようになり、それでOSとして成功した。WindowsではMS製のアプリケーションだけでなくてたくさんのすぐれた3rdベンダーのソフトをプロモートすることに成功し、デファクトOSとしての地位を不動のものにした。iTunesではiTMSがその役割をになっているように見える。iTunesではiTMS以外のミュージック・ストアーはどういう扱いを受けるのだろうか?ミュージック・ストアー以外のアプリケーションはどういう風に育つのだろうか?
Windowsの成功に大きく寄与しているファクターとして、もう一つ地味ではあるけれど周辺機器とのインタフェース、デバイスドライバーの標準化を積極的に進め、多様な3rdベンダーの機器の接続を可能にした点がある。iTunesで言えば、iPod以外のたくさんのデジタル・プレイヤーとの接続性に対応するだろう。
歴史を振り返るとOSの成功は、こうしたオープン性、インターオペラビリティーへの戦略と強い関係があるように思える。WindowsやLinuxというような昨今のOSで言えば、オープンなほうが成功するようにも思える。しかし、コンピュータの歴史をちょっと振り返れば、IBMのメインフレームのように独自のOSの上に自社の強力なアプリケーションや周辺機器をワンストップショップで提供することで大成功した歴史だってある。WindowsはIntelアーキテクチャ、PC/AT互換というハードウェアのアーキテクチャだけに対象を制限することで、多様なハードウェア・ベンダーの機種上アプリケーションに対するオープン性(バイナリー互換性)を実現しした。逆にUNIXは、あらゆるアーキテクチャのプロセッサ上で動作させることに成功したがゆえに、アプリケーションのバイナリー互換性が実現できずに苦戦した。単純にいつもオープン戦略が成功をもたらすというわけではない。
伝統的なOSにたくさんのAPIやプロトコルがあって多様なインターオペラビリティ戦略が可能なように、この新しいオーディオ・コンテンツのOSもいろいろなインタフェースを持っている。mp3やAACのような音源フォーマット。RSS、Atomのようなフィード・プロトコル。iPodなどプレイヤーとの同期プロトコル。DRMやストアー・プロトコルなどなど。
登場したてのこのオーディオ・コンテンツのOSの成功のためにはどのような戦略がたてられるのだろうか?対するWindows Media Playerはどういう風にアプローチするのだろうか?このところ沈黙のReal Audioは何を考えているのだろう?何日か前のある晩、Googleのオフィスでオーディオ・コンテンツ用のOSの開発オフィスに潜入した夢を見た。残念ながらどんなOSなのか開発者が紹介してくれる前に目が覚めてしまった。何のオーディオデバイスも音源ビジネスも持たないGoogleだったらどんなOS戦略をとるのだろう?
まだまだ興味のつきない業界だ。
Kj
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